「ホームレス」って誰

日本では、いわゆる路上生活者を指して「ホームレス」と呼んでいます。
しかし、私たちは、ネットカフェやファストフード店・友人宅や飯場などに寝泊まりされている方も含めて、「居場所をすでに失った」、あるいは「現在失いつつある」すべての人たちを、「ホームレス」または「ホームレス状態の方々」ととらえています。
*英語のhomelessは「ホームがない」状態を指す形容詞で、人を指す言葉ではありません。そのため、ここでは”ホームレス状態の方”を指すときは、カッコ付きの「ホームレス」を使います。
私たちの考えでは、「ホームレス」の方々を最大限大ざっぱに分けると次の2タイプとなります。

 Aタイプ 自立経験あり 

働いていて自活していたが、何らかの理由で失業し、家賃が払えなくなった時点で、頼れるところがなく野宿を始めた方。                     

 Bタイプ 自立経験なし 

障がい、虐待、いじめなど何らかの生きづらさから、実家などで暮らして(ときには引きこもって)いたが、親の死や家族との仲違いなどで家をなくし路上生活になった方。

POINT

AもBも「ホーム」を失う前に「ファミリー」をうしなっていることは共通しています。
そして、まがりなりにも働いて自立生活を送っていたAタイプの方は減りつつあり、Bのタイプが増える傾向にあります。

 なぜ「ホームレス」になるの?

「ホームレス」になったきっかけをAタイプの方に聞いてみました。
Bタイプの方はプロフィール例のページでご紹介します。

☆派遣で働いていたけれど、解雇され、次の仕事も見つからなくて最初はネットカフェ暮らし、そのお金もつきて野宿になりました(40代男性)

☆建築現場のとび職として働いていたけれど、怪我をして働けなくなりました。ほかの現場仕事を探したけれど不景気で雇ってくれるところがなく、路上生活になりました(60代男性)

☆10年以上、同じ飲食店で働いていて、このままずっと働けると思っていました。しかし不景気で店がつぶれ、ほかに雇ってくれる店もなく、アパートの家賃が払えなくなって路上生活になりました(40代男性)

☆家が貧しくて高校を中退して上京。正社員になりたかったけれどもどこも雇ってくれず、アルバイトを転々としているうちに病気になってアパートの家賃を払えなくなり、「ホームレス」になりました(30代男性)

☆公務員でした。投資に失敗して借金を返せなくなり、公金に手を出して逮捕。家族とは縁を切られ、出所後、「ホームレス」になりました(50代男性)

☆年金でアパートを借りて生活していました。しかし認知症になって入院中にアパートの契約を解除されてしまい、年金の通帳は親族が握っているので帰るところがなくなり、野宿になりました(70代男性)

☆家族を介護して生活が困窮しました。公営住宅で両親の介護をしていましたが医療費が足りず借金を負ってしまい、両親の死後、家賃が払えなくなって強制退去になりました。そのときに役所に相談しても何もしてくれませんでした(60代男性)

POINT

ホームレス状態になってしまった原因は1人1人、皆違い、さまざまな問題が関係しています。日本のあらゆる社会問題が「制度の谷間」を生み、そこに落ちた人が「ホームレス」になっています。こうなってしまう可能性は誰にでもあるのです。

 「ホームレス」はどのくらいいるの?

公式調査では、全国の「ホームレス」は2008年に16,018人であったのが2014年には7,508人になり(ホームレスの実態に関する全国調査 平成26年1月 厚生労働省)、この6年間で約53%減少したとされています。
また、私たちのフィールドである豊島区では2008年は166人であったのが2013年夏に48人になった(平成25年夏期 路上生活者概数調査 東京都)とされており、減少率はなんと約70%ということになります。
このように急速に減少しているならば喜ばしいことですが、問題は、これらの公式調査が「平日の昼間、道路や公園などで生活していると思われる人」を数えたものであることです。
ここ数年、街のすみずみまで寝泊まりさせないためのバリケード設置などが進んで、昼間でも居られる場所はどんどん少なくなりました。ほとんどの方は、夜だけ駅や公園、ネットカフェなどで寝て、日中は働いたり街をさまよったりしているのです。
ですから、これらの数値は「ホームレス」の実態を反映したものとは思えません。

  2008年覧 2013年 対象
全国  16018  7508 平日の昼間、道路や公園などで生活していると思われる人
豊島区(東京都調査) 166 48 平日の昼間、道路や公園などで生活していると思われる人
池袋(TENOHASI調べ) 130 102 池袋駅とその周辺に寝泊まりしている方

しかし、TENOHASIの夜回りではそれと相反するデータが出ています。毎週水曜日の夜回りで、池袋駅とその周辺で出会う路上生活者の数は2008年が平均で130人、2013年が同102人です。約22%しか減少していません。さらに、豊島区に多いネットカフェやファーストフード店などで夜を明かす人たちも含めれば最低でもその2倍になると思われます。

 どうやって暮らしているの?

これも人それぞれ、さまざまな暮らし方があります。

派遣や日雇いの仕事をしている。
アルミ缶を集めてリサイクル業者に売っている。
読み捨てられた雑誌を拾って露天商に売っている。

この3つが、池袋の3大産業?です。
多くの方は、これらの仕事をして
月に数万円の収入を得て暮らしています。

そのほかに、少数派ですが
飲食店の残り物をもらっている。
各地の支援団体の炊き出しや、
役所でくれるクラッカーなどを食べている。
自販機や路上に落ちているお金を拾っている。

などの方法で厳しい生活を送っている方もいらっしゃいます。
どれも容易ではありません。

 なぜ抜け出せないの?

ホームレス状態に陥ってしまうと、そこから自力で抜け出すのはきわめて困難です。
住所と携帯電話のない人を雇ってくれるところはまずありません。また、その弱みに付け込んでただ働きをさせる悪質な飯場がたくさんあります。
そこで、行政の支援策を使うことになります。支援策は主に就職を目指す「自立支援事業」と、最低限の生活費と家賃、医療費などを補助する「生活保護の2つです。

学歴や経験・技能や資格がある方なら、あるいは家族や友人の支援があれば、いっときホームレス状態に陥っても、抜け出すのはさほど困難ではないかもしれません。自立支援事業を利用して就職活動をすれば、有資格者などを求めている企業は見つかる可能性があります。
しかし、多くの方はそうではありません。それらの方がホームレス状態から脱出するのは容易ではないのです。

「努力しても結局どうにもならなかった、自分はダメな人間だ」とおっしゃる方に多く出会いました。家庭の貧困や障がいのために学歴も技能もなく、虐待やいじめなどのつらい経験をたくさんされてきた方がたくさんいらっしゃいます。将来に対する強い不安を持っている方がほとんどです。そしてホームレス状態になってしまうと、ストレスから“うつ”などの精神障がいを抱える方も少なくありません。

仕事につけなければ、最後のセーフティーネットである生活保護を利用することになります。しかし、生活保護が認められても、行政に指定された宿泊施設が劣悪で、障がいがあるために、集団生活でいじめに遭ったり、疲労や不調などで感覚的に繊細な状態になって耐えられなくなったりして路上に戻ってしまう方がかなりの割合でいらっしゃいます(非公開のデータですが、ある施設では生活保護を受けて入所した人の半数以上が入所中に逃げ出して「失踪廃止」となっています)。

そのような方が再度生活保護を申請すると「脱落者」としてさらに劣悪な施設に行かされることもしばしば。そのような経験を繰り返すと「こんな思いをするくらいならもう『ホームレス』のままがいい」と思って「路上に引きこもり」状態になることも少なくありません。路上生活歴の長い方の多くがそのような経験をされています。

POINT

行政の支援策には、「自立支援事業」と「生活保護」があります。しかし、精神障がいがあったり、支援途中にいやな思いを経験すると、路上からの脱出を拒否する人もいます。